ノートPCのHDDをSSDに交換するだけで早くなることは分かっています。
CPUの種類より、メモリーの増設より、確実に速度アップが体感できます。
ただSSDにもいろいろな種類・規格があり、HDDと交換するタイプは基本的には2.5”HDDと同様の形をしたもので、転送速度は最大でもSATA6Gの600MB/Sを超えることはできません。
これに対し最新のM.2 SSDでNVMe接続のものは、最新のマザーボードの場合最大3200MB/Sと、かなりの速度が出る規格です。
それこそ最新のマザーなら、M.2スロットが有ったりするので、NVMe接続の最新のM.2 SSDの最大のパフォーマンスを容易に享受できますが、今回はDELL Vostro 270sというスモールフォームファクタの中古ミニ・デスクトップにM.2 SSDを追加し、Windows 10をここから起動し動作させることはできないかと考えました。
そうすれば、ある程度古いPCでも、高価な新品PCよりも高速で快適に使用することが可能になります。
HDDをSSDに交換するのが手っ取り早いのですが、搭載しているHDDは500GBのもので、同容量のSSDは高価だし、第一先述のようにSATA接続では高速M.2 SSDを使う意味がありません。
なのでHDDはそのままデータ・ドライブとして利用し、SSDを別途追加することを考えました。
しかし当然ですが、この中古PCにはM.2スロットなど有りません。
そこでPCIeスロットに接続することにしました。
自作PCならマザーの仕様は詳しく分かりますが、メーカー製のマザーは仕様を詳しく公開していないので正確には分かりません。
マザーのPCIeスロットのバージョンがVer.3.0以上ならM.2 SSDの能力を最大限に発揮できるのですが、このDELL PCのチップセットがB75で、おそらくVer.2.0のはずなので、Ver.3.0の半分の転送速度になってしまいます。
それでも、NVMe接続にすればSATA接続よりもかなり早くなります。
M.2 SSDをPCIeスロットに接続するアダプタを使えば物理的には装着できます。
しかしマザーが古いと、このSSDからブートできないらしいのです。
SATA接続のM.2 SSDを購入すればブートできるらしいのですが、やはりそれでは本来のスピードが出ません。
そこで例によって先人たちの経験を利用させてもらうことにし、いろいろと調べました。
BIOSを改造する方法と「Clover EFI bootmanager」を使う方法があるみたいでしたが、BIOS改変はリスクが高いので後者の方法をやってみることにしました。
とりあえず、M.2 SSDとPCIeアダプタを購入しました。
最悪上手く行かなくても別のPCで使えばよいと思い、OSだけ導入すればよいので、安価な128MBのSSDにしました。
A社で約¥3,000でした。アダプタもA社で約¥1,200です。


M.2 SSDの欠点は発熱が高いということなので、購入したSSDにもアダプタにもヒートシンクが付属していました。
それを張り、SSDをアダプタに取り付け、アダプタをPCIeスロットに装着しました。因みにこのアダプタはPCIe x16スロットに付けるタイプで、本来このスロットはビデオカードを取り付けるものです。
装着後Windows 10を起動させ、ディスク管理を見てみたら、128MBのドライブとして認識していました。
Windows 10には標準でNVMeを認識するドライバーがあるみたいです。
しかしやはり、BIOSブート設定を見てもPCIeスロットのドライブからブートできそうにありません。
そこでClover EFI bootmanagerのことを調べましたが、USBメモリからブートさせたり、ブート専用のSSDを利用していたりで、なかなか私の環境と同じ例がありませんでした。
元々このClover EFI bootmanagerは、Windows PCにMac OSを(またはMac PCにWindowsを)デュアルブートさせている人の記事が多いものでした。
仕方がないので、両方の記事を参考にさせていただきながら進めていきました。
既にHDDにはWindows 10がインストール済みでしたが、MBRパーティション構成で、レガシーブート方式でした。
しかしNVMeからブートするためには、GPT構成+EFIブート構成に変更する必要がありました。
そこでまず、MBRをGPTに変換することにしました。
Windows 10には標準でMBR2GPT.EXEというモジュールがあり、MBR2GPT.EXE は、Windows 10 Version 1703以降を実行している Windows 10 コンピューターの Windows\System32 ディレクトリにあります。
しかしフリーソフトでもっと簡単に出来ないかと調べ、「AOMEI Partition Assistant」の無料版で出来るような記事があったので、ダウンロードしインストールしました。しかし、変換メニューをクリックすると、有料版を購入せよとのメッセージが出てできませんでした。いかにも無料版でもできそうなコマーシャルはずるいです。
どうもフリーソフトではできないようなので、結局MBR2GPTでやることにしました。
予めディスクの管理で、Disk番号を確認しておきます。(通常は0)
コマンドプロンプトを必ず管理者で開きます。(最初私は管理者で開いておらず、エラーで失敗しました)
構文は以下の通りですが、
MBR2GPT /convert /disk:0 /allowFullOS
いきなり変換する前に検証する場合は、convertのところをvalidateに代えて実行します。
余談ですが、当店で販売する中古PCは基本的に、私の方針で、パーティションを分割し、ドキュメント等ユーザーフォルダをDドライブに移動設定します。
この理由は、OSがクラッシュしてCドライブを初期化する必要が生じても、データを退避する手間が省けるし、Cドライブにデータを保存するよりもデータ損失の可能性が低くなるからです。
PCメーカーによっては、最初から分割している会社もありますが、DELLはCドライブのみの構成です。
なので今回のPCもDELLで、Cのみでしたが、分割し設定も変えていました。
しかしMBR2GPTは、論理ディスクがあると実行できないということだったので、設定を戻しDを削除しました。
そうしてからValidateを実行しましたが、Partition Layoutエラーになりました。
「Dドライブ削除したのにおかしいな?」と思いパーティション構成を再度確認したところ、何故か回復パーティションの手前に小さなパーティションがありました。
これを削除してから再度実行したところ、うまく変換できました。
この後BIOSのBOOT設定をレガシーからEFIに変更し、Windowsが起動できることを確認しました。
次にHDDをSSDにクローンすることにしました。
クローンする際、「EaseUS ToDo Backup」にはお世話になっています。無料で便利なソフトです。
これのブートディスクで起動してクローンすることが多いのですが、何故か今回は起動が途中で止まってしまったので、HDDにインストールすることにし、インストールしたプログラムから実行しました。
以前なら起動実行中のHDDのクローンはできなかったのですが、すんなりできました。
今回のように、元HDDより先SSDの容量が小さい場合でも自動的に縮小してくれます。
本当に優れたソフトです。
次のミッションはCloverのインストールです。
先述のように、Cloverは基本的にはMac用らしく、GUIでインストールできるのはMacだけのようで、Windowsの場合はISOファイルをCDに焼いてそのCDからブートするとのことだったので、まずそのCDを作りました。
そしてそのCDから起動したら(EFIモードではCD起動できなかったのでレガシーモードに戻した)、四角いアイコンが横に並んだブートメニュー画面が表示されました。
どのパーティションから起動するか選ぶ画面のようです。
このブートローダーをHDDにインストールしたいのですがやり方が分からず、いったん終了し再度ググりました。
そうしたら見つかりました。(先達に感謝)
まずHDDのEFIパーティションの中のファイルをCloverのものに置き換える必要があります。
しかし、Windowsの中からはこのパーティションを操作できません。操作できるようにする方法はいくつかありますが、私の場合は、「Hiren's Boot PE」というPE環境のユーティリティを使いました。
「Hiren's Boot CD」は、かなり以前から利用しており、このブログでも紹介していて、大変お世話になりましたが、最近のGPTやEFIブートには対応しておらず、それのPEバージョンがHiren's Boot PEです。
これのパーティションツールを使ってEFIパーティションにドライブ文字を付与し、操作できるようにしました。
そしてEFIパーティションの中にあるEFIフォルダを念のため別名で保存しておき、Clover CDの中にあるフォルダ(EFI、Library、usr)を全てEFIパーティションにコピーします。そうしてから、Clover CDの中にあるEFIフォルダ内のファイルを全て、EFIパーティションのEFIフォルダの中にコピーします。
次にNVMeのドライバーをコピーするのですが、私がダウンロードしたCloverは最新バージョンですが、先人たちの記事のフォルダ構成と少し違いました。
後は私の推理で行いました。(検証していないので、もしかしたら以下の操作は不要かもしれません)
私が行った操作は、EFIパーティションにコピーしたフォルダの中のEFI→CLOVER→drivers→offと開いてゆき、
NvmExpressDxe.efiファイルを切り取り、一つ上の階層driversに戻り、UEFIを開き、そこに張り付けました。
(切り取りではなく、コピーでも良い様な気がしますが、検証していません)
再起動して元のWindows 10を起動し、ブートマネージャーをCloverに置き換えます。
管理者でコマンドプロンプトを起動し、BCDEDITを使い、Bootレコードを書き換えます。
C:\Windows\system32>BCDEDIT /SET {bootmgr} PATH \EFI\CLOVER\CLOVERX64.efi
C:\Windows\system32>BCDEDIT /SET {bootmgr} DESCRIPTION "Clover EFI"
(結果的には2行目は不要かも?)
ここまででCloverのインストールは完了(のはず)で、SSDから起動できるはずなのですが、クローンしただけでは起動しないことが多かったので、やって見ないと分かりません。
一旦PCをシャットダウンし、起動させたら、Cloverのブートメニューが表示されました。
先ほどと同様のアイコンが並んでいますが、ここは当てもの推理で、左から2番目のアイコンを選択しました。
Windowsのロゴが表示され、すぐにWindows 10が起動しました。
ディスク管理を確認すると、SSDがCドライブになっていました。成功です!
再起動すると、またCloverのブートメニューが表示されましたが、すぐに消えWindowsが起動しました。
Cloverは、前回起動したもので自動的に起動する仕様なので、このままでも構わないのですが、せっかくSSDにしたので、少しでも早く起動するように、タイムアウトを0に設定します。
EFIパーティションの、\EFI\CLOVER\config.plistファイルをテキストエディターで開き、
<key>Timeout</key>の行を探し、次の行を<integer>0</integer>とします。
これにより、Cloverのブートメニューが殆ど表示されることなく高速に起動します。
最後に、EFIパーティションのドライブ文字を削除し、HDDのOSパーティションを削除し、空き領域に新規パーティションを作成しDドライブとしました。
そしていつものように、ユーザーフォルダをDに移動しました。
HDDのEFIパーティションの前にある回復領域も削除してDに割り当てることも考えましたが、そこまでして起動しなくなるのを恐れ、やめました。
新品PCを買っても、HDDの場合起動に1分以上、下手をすると2分以上かかります。
私の定義する起動とは、スイッチONからデスクトップの全てのパーツが表示されるまでの時間ですが、私の経験では、この時間にCPUの性能差はありません。メモリーを8GBにすると10秒~15秒くらい早くなります。
当店の中古ノートPCは、不要な自動起動アプリは整理していますが、HDDをSSDに交換すると30秒で起動します。
今回のDELL PCはメモリー4GBですが、今回の改造後、15秒で起動しました。
CrystalDiskMarkで測定したら、シーケンシャルリードで1500MB/S程度出ていました。
「爆速」と言っても過言ではないでしょう。
最近のPC離れの理由の一つとして想像されるのは、PCの起動が遅いということがあると思います。
スマホやタブレットは、フラッシュメモリーであり、基本的に「つけっぱなし」なので、すぐに使えますが、PCは使い始めるのに時間が掛かるので面倒だと感じるのではないでしょうか。
スマホやタブレットは画面が小さく文字入力も面倒なので、大きな画面でキーボード入力も早いPCの方が使いやすいはずなので、15秒程度で起動できるようになれば、PCにもまた戻って来てくれるのでは?と期待しています。
theme : 自作・改造
genre : コンピュータ